2022.10.26
京都 表装(2022年7月)
日本の室内装飾で重要な役割を果たしている掛軸はその土地の風土・文化に合わせて仕立てられ、季節感を大切に空間を彩りながら「美」を表現する伝統工芸。
フランスとイギリスで額装を学んで以来、この凛とした表装の世界にずっと心惹かれていましたが、昨年末より表具の本場京都にて学びの機会を得ることができ、今夏、記念すべき第一作目が完成しました。
本紙(作品)を引き立てる裂の組み合わせやサイズ決めの工程は額装に通じるものがありますが、裏打ちをするパーツにより様々な種類の和紙を使い分け、糊の濃度や作業時の天候(湿度)に気をつけながら進めていく緻密な工程は100年先でも修復可能な巻物になるようにと考えられていることを知り、長い歴史に培われてきた表装技術の奥深さにただ驚くばかりです。
今回は数十年振りに筆を握り、「花」の一文字と故郷で咲いていたコスモスの押し花を組み合わせて本紙を作ってみました。何でも手軽に入手できる時代だからこそ、じっくり時間と手間をかけて自分の作品を創り出していくこの体験が、今はこの上なく貴重なものに感じられます。